田園都市出版社

活字者へ

天気予報を信じないせいで 雨に濡れて歩くとしても
自転車に乗るときは 晴れよりも曇りがいい
文字を書く前には珈琲を淹れる より深く呼吸するひととき
ネットに遊ぶより本を読む ふたたび紙の手触りを感じられるよう
旅の記憶は国境の駅舎か スロウボートか
古い写真機を覗き 空を見て絞りを決める フィルムを巻き上げる
このノートパソコンがタイプライターだったら 成長痛もがまん
生きなければならないから
かそけきかりそめの場所で息をひそめている
そんなふうに過ごしているのだろうでも生き辛いだろう
紙であれ 電子であれ 活字者へ